今日って雨かと思っていましたが、降らないで済みそうですね

日差しが眩しくて、冬らしからぬ陽気ですね。
今日と明日の名古屋はシャンパーニュ騎士団の叙任式があるおかげで、シャンパーニュメーカーだらけです

ミツクラにもいくつかアポのお申し出がありましたが、今日もワイン会、明日はカストラーニで、無理無理

これからジャクソンのセミナーに行かなくちゃいけませんし。
3日前とかホント無理です。
もっと早くアポ取ってくれー

まぁ、その程度のアポって事ですね。
でも、今日は朝から素晴らしい方にお会いできました

シャンパーニュメゾン、カナール・デュシェーヌの醸造長のローラン・フェドーさんが来てくれました

日本語めちゃ上手い販売担当のジェレミさんも一緒。

写真撮りませんでした…ま、いっか
簡単なお話だけだと思っていましたが、醸造やデゴルジュマンの細かい技法まで1時間以上も説明してくれまして、最後はパワポの資料をモニターで動画も見ながらの解説となった、とても有意義な時間でした

畑の地図も一緒に見ながら確認。
くーっ、こんなんならセミナーやってくれたらよかったのにぃぃぃ

と思うくらい素晴らしい内容で、てんちょ一人で聞いててええんかい、って思いましたよ

も、もったいない。
全てはとても書けませんので、今日もかいつまんで紹介します

カナール・デュシェーヌは1868年創業のとても古いシャンパーニュメゾンです。
カナールさんという樽職人とブドウ栽培家のデュシェーヌのお嬢さんが結婚してできたネゴシアンで、
今年で150周年となっています。
この蔵はメゾンにしては珍しく、モンターニュ・ド・ランスの北の端、リュードという1級畑(村)にあります

多くのメゾンが商売を拡大する中でランスやエペルネ都市に移っていったのですが、カナール・デュシェーヌだけはブドウ畑の中にとどまったのです。
この蔵の創始者のヴィクトールさんは商売熱心で、早くから輸出に力を入れました

19世紀の終わりには最大の輸出市場だったロシアへ出荷し、ロマノフ王朝のニコライ2世に気に入られ、カナール・デュシェーヌの紋章はこのロマノフ家の双頭の鷲をつけることを許されました。
さらにナポレオンの騎兵隊のサーベルが加わり、現在の紋章となっています。
ここで、お話には出ませんでしたが、
ニコライ2世は暗殺により死亡、その後のロマノフ王朝も革命により消滅し最大の買い手を失い、途中でベルエポックはあるものの、戦争やアメリカの禁酒法で、シャンパーニュ地方は踏んだり蹴ったりです…
ここで多くのメゾンが倒産してますが、とある有名メゾンRが言うには「当時、つぶれそうなうちを買いたいと思う他社も、その金を持っているところもなかったので今でも存在している」んだそうで

今のゴージャス、絢爛豪華なイメージとは程遠い時代もあったのですよ。
カナール・デュシェーヌも、その後経営にはあまり力が入っておらず、スーパーマーケットに並ぶ銘柄だと思われるほど長らく低迷しちゃってたんですが、2003年に大手のティエノの傘下に入りました

今日来てくれた醸造長のフェドーさんは元々ティエノの醸造長だった方です。
ティエノの傘下に入るとすぐに、フェドーさんは新しいキュヴェを3つ作りました


シャルル7世 ブラン・ド・ブランNV

あとは、
キュヴェ・レオニー ブリュットNV
パーセル181 エクストラブリュットNV
です。
3つとも試飲させてもらいましたよ

ものすごく美味しかった

香りが非常に繊細です、ブランドブランは48カ月も瓶熟していますが、濃すぎる酵母香がなくとてもフレッシュです。
それでいて(特に私シャルドネがそんなに好きじゃないので)固くもなく、シャープじゃないってところが非常に気に入りました

それぞれのキュヴェのコンセプトが的確に伝わる、正確な醸造だなぁと感動です

爽やかで上品、でも軽い訳じゃないって感じ

特筆すべきは、二つの事です

(基本的なお話も大変貴重なんですけど)
まずは、ブショネ対策としてミティーク・コルクを採用している事

これのおかげでカナール・デュシェーヌのシャンパーニュには99.9%ブショネはない。
ミティークというのはスティルワインで言うディアムコルクの事です。
簡単に言うと、蒸気殺菌した圧着コルクですが、ブショネの原因となるTCAを繁殖させません。

一般的なコルクと比べると均一ですよね、
これは一見、安物に見えますが違うのでご注意ください

ディアムコルクって長い天然コルクと変わらないくらいのお値段なんです

製造ロット管理もされていて厳格な規格があります。
因みに、カナール・デュシェーヌのコルクにはいつもシャンパンサーベルが描かれているそうです


そして、もう一つはデゴルジュマン後の驚きの技術です

シャンパーニュは、
瓶内二次発酵
↓
瓶熟
↓
デゴルジュマン
↓
ドサージュ
↓
コルク打ち
↓
(ちょっと馴染ませて)ラベルを張って出荷
という手順で我々の手元に来ますが、デゴルジュマン〜コルク打ちまでは一気にやってしまいます

のんびりしてると泡がなくなっちゃいますからね。
(とは言ってもそこまで大慌てでなくても大丈夫)
機械化された流れ作業で、ポンポン抜かれてサクサクコルクがはめられていきます

爽快な眺め。
多分youtubeで検索すればすぐに出てきます

で、ドサージュの行程についてはご存知でしょうか??
澱引き(デゴルジュマン)で減った分をリキュールで補い、味を整えるのですが、
ここで、どんな蔵でも多少ワインが泡立ちます

長い瓶熟で二酸化炭素は溶け込んでいますので、瓶口の泡立ちには問題はないのですが…
よく見てると、
泡が上まで立つボトルと、ほとんど立たないボトルがあります

そこに目を付けたフェドーさん

つまり、泡がほとんど立たないボトルには、そのままコルクで蓋をすると液面までの空気が瓶に含まれることになります。
一方で、上まで泡立ったボトルにコルクとすると、泡が収まった後には空気がほとんど残りません。
この差、分かりますか??
見せてもらった写真をお見せしたいが…ない 涙
これが出荷後の経過で瓶差となって表れるので、それを防ぎたいと秘策を講じたんです

瓶差=ボトルバリエーションは熟成すればどんなワインにも現れても仕方ない物です

でも、それを少しでも減らそうという試みは驚いたなぁ
カナール・デュシェーヌで特別に誂えた機械は、ドサージュした後にほんのちょっと、僅かに1滴だけ「水」を垂らして全てのボトルを物理的に泡立たせ、空気が入らなくしたうえでコルクを打つそうです

この技術、元はビール業界の物だそうですが、め、めんどくさい事やってますなぁ

すごいわ。
ミティークコルクとこの密閉作戦のおかげで、SO2の使用を30%も減らすことが出来たそうで、それは大変良かった

いやぁ、いいお話だった。
しかもフェドーさん、普段はあまり秘密を語らないそうで、ラッキーかも。
今度来るときはお客様向けに話してくださいね、と約束してお別れました〜