2020年01月13日

酸の海のサバイバー


鏡餅は全てもらっていただけました、ありがとうございます

また、昨日のブログでご案内しましたアンドレ・クルエ会も満席になりました。
お申し込みいただきました方々ありがとうございます
ドリームヴィンテージ2002の入手に苦戦してます…


今日は成人式ですか

てんちょ、遠い昔の事ですが…
緑色の振袖を着てて、赤い振袖の友達と写真を取ったら、
みんなに「クリスマスみたい」って言われて大うけでした
久しぶりにあった同級生がすっかり変わっていたりして(いい意味でも悪い意味でも)
でもあれから何十年ー(きみまろ調)



昨日のアンドレクルエですが、ここは全て同じデザインのラベルです。
色違いなだけ。
現当主の祖父が1991年の豊作を記念して作ったラベルです
クルエにはこれ以外のラベルは無し。

ドリームヴィンテージを作る前まではほとんど全てのシャンパーニュをピノノワール100%で作っていました
てんちょが蔵に訪問した時にも「シャルドネは世界中にあるし、つまらないよね」って言ってましたし。
ピノノワールで高品質に挑戦することにやりがいと喜びを感じてるとも。
だから、アンドレ・クルエにはブラン・ド・ノワールしかないと思ってる方もいるかも

唯一つの例外がミレジムです
これ ↓

andre-clouet-brut-millesime-champagne-france-350.jpg

しかもクルエのミレジムは通常のヴィンテージシャンパーニュとは色々違っています

まず、このターコイズのラベル、毎年作ってるんです

因みに、この色はご先祖がナポレオンに仕えていたそうで(ドメーヌに大きな銃などの遺品があります)、当時のフランス軍の制服の色なんだとか。
ナポレオン軍の制服ってもっと青くないかい???
元は赤と青だった、あの赤の染料が高額だという理由で後に青だけになったのは本当だろうか。

多くのシャンパーニュメーカーではヴィンテージシャンパーニュはいい年だけの限定的な生産です
リザーヴワインをブレンドせずに単独の年のブドウで作られるシャンパーニュは特別な物で、より良い品質を保証する物でもあります

しかし、ジャン・フランソワ(クルエのオーナー)は、その年を毎回表現したいと毎年ヴィンテージシャンパーニュを作っています
どんな年でもその個性があり、表現すべきだというお考え。
へー

そして、このヴィンテージシャンパーニュにだけはシャルドネをブレンドしています
年によって20%〜40%くらい混ぜてるようですが、なんでだろうね??


最大の疑問はこのミレジムだけ、MLFしてないんですよねー

今日の書きたかった事はこれ

シャルドネをブレンドしててMLFしてないもんだから、ミレジムだけやけにシャープでとんがってる厳しい味わいなんです
てんちょ、若いサロンが苦手なんですが、きっと同様の過程からくるリンゴ酸が辛すぎるのかも。

MLFって聞いた事ありますか??

マロラクティック発酵とも言われ、ワインの醸造過程で乳酸菌の働きによって、ブドウ由来のリンゴ酸が分解されて乳酸になる代謝の事です

アルコール発酵もですが、全ての過程や化学反応が解明されていない部分もありますが、この乳酸菌の作用はワインの味に大いに変化をもたらします。
通常はアルコール発酵の後に続いてMLFが起こるのですが(ボングランみたいな逆になる不思議な蔵もある)、MLFが終わると酸味が穏やかになり、やや複雑な香りが生まれるとされています。

リンゴ酸よりも乳酸の方がPHが高いので、総酸度が下がり、口中で柔らかく感じるのです。
リンゴ酸は代謝され、乳酸と二酸化炭素に分解され、その過程でジアセチルが生成されます。
「汗臭い」と表現され、沢山あると不快そのもののジアセチルですが、ほんの少量だと香りにアクセントや複雑さを生むと考えられ、オフフレーバーにはすくに結び付けられないようです
フェロモンと同じ?

この乳酸菌、変わってますねー

発酵を興す酵母菌と同じく、酵母にもサッカロミセス(以下色々)やアピュラタがあるように、乳酸菌にも非常に多くの種類があります。
ワイン中で活動する乳酸菌はヨーグルトに入ってるものとは全然別の種類です

ロイコノストックと呼ばれる種がその中心ですが(さらに細かい分類アリ、ここからは知りません)、主にセルローズなどの炭水化物を代謝する嫌気性菌です。

余談ですけど、もう、学名をラテン語でつけるのやめませんかねぇ
鈴木さんが発見したから「鈴木菌」でいいじゃないですか
Oenococcus oeniなんて発音できないよー
(オエノコッカス・オエニ、MLFを興す乳酸菌の名前)
セルヴィシェとか日常生活では絶対に口にしないし
以上、凡人の嘆き

繰り返しますけど、この乳酸菌は変わった存在です

酸度が高い(PHが低い)と多くの菌は活動も生存もできませんが、この菌は酸に強い
酸耐性いと高し。

さらに多くの菌は発酵前の果汁の様に栄養豊富でブドウ糖などの吸収しやすい代謝対象があった方が活動が盛んになる、のは当然の事ですが、このオエニ菌はアルコール発酵が終わった後の栄養素が乏しい液中でも活動し、残存物で乳酸発酵を行える珍しい菌です。
バトナ―ジュすると澱中の酵母の死骸から放出されたアミノ酸などで活動が盛んになり、よりコクが増すと考えられています。

しかし不思議なもんですねぇ
何故こんな過酷な環境下でも活動する奇特な菌があり、乳酸なんてもたらしてくれるんでしょう??

それはもちろん、菌の生殖活動の結果に過ぎません

別に乳酸菌君は「ワインを美味しくしてやろう」とか、「酸味を和らげてあげよう」なんてこれっぽちも考えていません(当たり前だ)
菌の生存のための働きがたまたま人間の嗜好品の品質に大きく関わっているだけです。
(リンゴ酸の分解でアデノシンリン酸のエネルギーを得てるらしいです、高校で習ったなぁATP)

酵母もそうですね。
生きる為にやった事が、今、我々の飲み物を美味しくしてるというのは実に不思議な話

わーい、発酵万歳だ
チーズも漬物も大好き。


で、MLFの現場ですが、今はスターターを使う生産者か、ビオディナミでは何もしないで放っておく、のどちらかになるようです。
ビオでは全て終わるのに2年かかったとか… 翌年のワインはどーすんだろ

反対にMLFを起こさせたくない時には亜硫酸を添加すると、乳酸菌は働けなくなります。
(亜硫酸はアルコール代謝の過程でも生成され、自然界にもあるものなので、必ずしも悪者ではない)
クルエのミレジメではこうしてMLFのない、シャープなシャンパーニュを作ってるという訳です。

しつこいけど、クルエってば、なんでミレジムだけMLFしてないのかなぁ
確か当時も聞いたけど明確な答えがなかったような…

まー、ともかく飲めば分かる
現行は09かな、ドリームヴィンテージは02がダメなら05だ






posted by cave MITSUKURA at 20:29| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする