2022年04月11日

未知のモノポール


暑いくらいの名古屋です
半袖で余裕で過ごせますね

先週、今週と何回か、業界向けの試飲会がありまして、久しぶりに色んなワインを試せるのはとても嬉しいです
ただ、今日の会では170種類くらいあって、とても全てをじっくり飲む訳には行きませんので、事前に作戦を立てて効率よくピンポイントで試飲して来ました

もし、時間さえあれば全部をじっくり試飲したいところですが、そんなに集中力が続くかどうかも心配
年齢が上がって、一番思うのがそこですね。
もう何時間も何か一つにずっと向き合うなんてできないかも



今日はこのブルゴーニュを紹介します

アンリ・グージュ クロデ・ポレ・サンジョルジュ.jpg

アンリ・グージュ ニュイサンジョルジュ1erクロデ・ポレ・サンジョルジュ2018 モノポール

この畑がピンと来る方はかなりのブルゴーニュ通ですね
アンリ・グージュの名前を知ってる方もどのくらいいるでしょうか?

このワインはピノノワール100%の赤ワインです
名前の通り、ブルゴーニュ、コート・ド・ニュイの一番南のAOC、ニュイサンジョルジュの1級です。
(村としてはプレモー・プリセがありますけど、ここはニュイサンジョルジュAOCになってます)

ここ、ニュイサンジョルジュにドメーヌを構えるアンリ・グージュは1936年元詰め開始の老舗生産者です

アンリさんは初代当主で、大戦間にあってワインの価格が下落してる状況に鑑み、ドメーヌ自らがワインを作って販売する新しい手法=元詰めを始めました。
現在では当たり前になっているこの行為ですが、戦前はブドウを作る人、ワインを作って売る人は別で、醸造と販売は専ら大手のネゴシアンと呼ばれるワイン商が手掛けていました。
後にINAOのAOC制定でも、アンリ氏はブルゴーニュの代表として貢献しています。
(ヴォルネイのダンジェルヴィーユ氏もそうなんですが、どちらも自分の区画を特級に申請しなかったんですよね、
 どのような考えかは知る由もありませんが、自らを利する事なく地域の為に働いたって事でしょう)

良いワインは良いブドウから、良いブドウは誠実な畑仕事から
という今では、これも当たり前の言葉ですが、アンリ氏は元詰めを始める時に既にそれを自覚し、二人の息子たちとブドウ樹を植え替えるなど積極的にワインの品質向上に取り組んでいきます

当時は沢山作った方がお金になるので(量に応じての支払いだったので)、収穫を減らすとか、設備を導入する費用をかけて少ないワインを自家醸造すると言うのは農家にとっては信じられない事だったと思います
わざわざ、そんな余計な事しなくても、って周りには思われていたでしょう

しかし、やっぱりアンリ氏には先見の明がありました

作ったワインは好調で、すぐに欧米各地へと出荷されるようになりました
そしてアンリ・グージュのワインはニュイサンジョルジュのみならず、ブルゴーニュでも有数のワインとして知名度を上げていきました。
現在は4代目のグレゴリーとアントワーヌの兄弟が持続可能な農業を基本にワイン生産を続けています。

アンリ氏はこんな方です ↓

histoire-henri-gouges-2-scaled.jpg
HPより、当時のレ・サンジョルジュのボトルも

如何にも土地の名士って感じですね



アンリ・グージュを語る時にはもう一つ、必ず言及されるであろう事があります
それは、
ピノ・グージュという突然変異の白ブドウです

アンリ・グージュ氏は畑を見回っていたある時に、ピノノワールの中に他と違った物があるのに気が付きました。
それは白いブドウで、ピノブランのようでしたが、その区画にだけある独自の物でした。
これが1930年の事で、彼はこのブドウをピノ・グージュと自分の名前を付けて栽培し始めました。
それから現在に至るまで、古木のブドウを残しながら、固有の品種としてピノ・グージュはアンリ・グージュで栽培され続けています

そのブドウを使って蔵で作っている白ワインは二つだけ、
ブルゴーニュ・ブランと、
1級のニュイサンジョルジュ・ペリエールです。
どちらもこのピノ・グージュを100%使用していますが、生産量が極めて少ないので最近では見る事も稀になって来ました。
見たら買った方がいいですよ

2018年2月にこの白ワインの紹介してます ↓
https://cave-mitsukura.seesaa.net/article/456940746.html



さて、で、今日のワインのニュイサンジョルジュの畑ですが、
多くの方はヴォーヌロマネやシャンボル・ミュジニーの区画を覚えていても、ニュイサンジョルジュの区画が分かってる方は少数派ではないでしょうか

ニュイサンジョルジュはヴォーヌロマネの南に続いており、中心の集落の北にある谷を境にブドウ畑が二分されています。

こんな風です ↓

ニュイサンジョルジュ地図.png
ブルゴーニュワイン委員会より

細かすぎてこのままじゃ見えませんね
ここを参照してください ↓
https://bourgogne-maps.fr/pdf/denominations/29.pdf

北側がヴォーヌロマネに続く部分で斜面の上部中央が1級です。
(ブードはマルコンソールと地続きですが、それを知って買う人はあまり日本ではいないかな)

南側は半分がプレモー・プリセ村に属してますが、細長く続く畑で、同じく上部斜面に1級畑があります。
(プレモー・プリセ部分はほとんどが1級です)

繋がってない、ってとても珍しいです
しかも1級畑が41もあります


今日のワインの、クロデ・ポレ・サンジョルジュは南側のど真ん中にあります ↓

ニュイサンジョルジュ アンリ・グージュ地図.png
3.6haもある区画

これほどの区画を単独所有するって言うのは流石、ニュイサンジョルジュで早くから元詰めをしてるアンリ・グージュですね

かつてのニュイサンジョルジュは北部のコート・ド・ニュイでは大きな町で、オスピスがあったり行政的には1等地の中心部だったんです。
ここに居を構えるのは名誉な事だったでしょう
(今でもオスピス・ド・ニュイのワインオークションはあります、オスピス・ド・ボーヌほどではないですが大きなお祭りです)

因みに、ニュイサンジョルジュでは村名でも1級でも赤も白も生産が認められていますので、隣(上部)のペリエールの区画では先述のピノ・グージュので1級の白ワインが作られています。
(ペリエールはその名前「石」が意味する通り、昔の石切り場の跡にある畑でシトー派の修道士によって開墾された区画です)

クロ・デ・ポレ・サンジョルジュ(ただのレ・ポレ・サンジョルジュっていう畑が隣にあるのでややこしい)は、長熟で高貴なワインだそうですが、
わたくし、これは飲んだ事がありません
なのでよく分からない(すんません)

かつてのラヴェル博士にも言及された特筆すべきワインですが、どのくらい待てばいいのかなぁ…
アンリ・グージュのワインは、とても良い、っていう人と、難しくてよく分からない、っていう人がいるように思います
てんちょは正直、どっちとも言えなくて、そこまで沢山ちゃんと飲んでないからだろうなー
嫌な印象は全くありませんが。

このワインの含めて、白も何本か寝かせてあるんで、
しかるべき時が来たら一度に飲んでみたいと思います
8本くらいあるんじゃないかな。

今日のモノポールワインはたったの2本しかありません
値段は1万円と少し、高くはないですが、飲み頃については全くアドバイスできませんのであしからず。
待った方がいいでしょうね

緑のラベルが好きです









posted by cave MITSUKURA at 17:35| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする