昨日、東海地方も梅雨入りしましたね
今日の名古屋は寒い
ですが、今年の夏は暑いそうで、うそでしょ…
毎年の暑さ以上になったら名古屋では本当に命が危ないレベルですよ
今日はこのワインを紹介します
(先にお断りしておきますが、ちょっと長くなってしまいました)
古典ワインですね、知識も経験もどちらの点からもも抑えて(飲んで)おくべきでしょう
ベガ・シシリア オレムス トカイ レイトハーヴェスト2017
トカイの名前で分かるでしょうか?
今日のワインはハンガリーの白ワイン、甘口です
オレムスのワインは辛口を前に紹介しました ↓
https://cave-mitsukura.seesaa.net/article/478838839.html
(この辛口ワインも美味しいですよ、ブドウの質の高さが分かります)
ハンガリーのトカイは中世の頃から王族貴族の羨望の的でした
この地域の品種であるトカイ・フルミントから作られる甘口のワインは病気を治し、寿命を永らえ、至福の時をもたらす特別なワインだったんです。
ルイ14世が「王のワイン」と呼んで珍重してたらしい
現在でも世界3大貴腐ワインの一つです
後の二つは、
ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ
フランスのソーテルヌ
地球で最も美味しい甘口ワインですな
チェコの南、オーストリアの東に位置するハンガリー、てんちょ行った事ありませんがいつかは行ってみたいです。
ワイン産地は、国内に広く分布していますが、有名なのは今日のトカイと赤ワインのエグリ・ピカヴェール(雄牛の血)の二つでしょう
どちらも首都のブダペストから東の地区にあります。
エグリワイン、飲んだ事ありますか?
若々しいミディアムボディですが野性味もあって美味しいです
それでも、ハンガリーワインと言えばやっぱりトカイが真っ先に名前が挙がるのに異論がある方はいないでしょう。
しかも、今日のオレムスはトカイの生みの親なんです
このブドウ園は1600年の初期から記録が残る大変歴史のある蔵で、ラコーツィ1世の治世下には王領であった事もあるほどです。
ラコーツィ家はトランシルバニアを収める貴族で、ドラキュラ伯爵のモデルになったウラド・ラペツェ(15世紀の人物)の所領を継承した一族です(大雑把すぎ?)。
この時期の東ヨーロッパは長年に渡りオスマン帝国の侵攻を何度も受けており、かなり劣勢ですが、何とかキリスト教世界を死守
ラコーツィ1世の治世より少し前の1630年、オレムスのあるこのトカイ地域は恒例行事の様にオスマン帝国と戦争になり多くの人が戦場へ駆り出されます。
畑を面倒見るのは残された老人と女と子供だけ、もちろん人出は全く足りてなかったでしょう
収穫が遅れ、枯れたようになってしまったブドウ畑ですが、せっかくの果実を諦めるのが勿体なくて茶色いブドウでワインを作ってみたところ、これが非常に甘くて美味しい
これぞ奇跡
と、トカイの甘口ワインが誕生したそうです。
勿体ない精神の勝利の果実だ
もちろん、フルミント種が遅摘みや貴腐菌の付着に適していたんでしょう
修道士はこのワインをトカイ・アスー(トカイのジュース)と名付け、その名前は広く西ヨーロッパへも広まる事になりました。
その後、この甘口のワインはハンガリーの重要な輸出産業となり、18世紀の前半には生産する畑を登録、格付けまでしてその品質と名称を保護していたほどです
戦後の法整備が始まるずーっと前の事です。
その誕生の地の末裔が今日のオレムスです
現在はスペインのベガシシリアの傘下になっていますが、もちろん蔵は独立しており、伝統と最新設備が融合したかなり贅沢なワイナリーになってます。
お金持ち〜
現在の法律では、トカイの名称は、EUのPDO(フランスのAOCに相当)に属する産地として分類されていますが、その中でも上位クラスのDHCと言う2003年から導入された新しいカテゴリーに入っています。
(てんちょ、この辺りの事はあんまり知りませんのでこれから勉強します、しかもマジャール語ちっとも分からない)
ハンガリー国内では7つしかないDHCの表示が高級品の証でもあるので、購買者には分かりやすい様です。
なるほど。
トカイに認められるブドウ品種は6種類
フルミント
ハールシュヴェレリュ
(↑ この二つが代表的品種です)
カバル
クヴェルスールー
シャールガムスコータイ
ゼタ
…後半の土着品種はイメージ湧きませんね
そして、トカイの名前を付けられるワインは9種類あります。
これも2013年の法改正によって細分化されています。
上位から(糖度が高く生産が希少な順)、
1.エッセンシア
2.アスー
3.サーラズ・サモロドニ
4.エーデシュ・サモロドニ
5.フォルディターシュ
6.マーシュラーシュ
7.ケーシェイ・シュテーレシュ・ボル
8.フェヘール・ボル
9.ペジュグー(これはスパークリングワイン)
後半全く聞いた事ないー
扱ってる輸入元も知らない
重要なのは1のエッセンシアと2のアスー、3と4のサモロドニです。
エッセンシアは特に貴重で、トカイの頂点です。
貴腐が付いたブドウを手摘みで収穫した物で、残糖が450g/Lもないといけませんし、更に酸もアルコールも決められています(甘いだけじゃダメなんです)
滅多に作られず、条件の整った限られたヴィンテージの生産になる為、値段もかなり高額です。
因みにオレムスのエッセンシアは375mlで82500円です↓
甘露
次に、トカイ・アスーが本格的な甘口トカイでは入手しやすく、バリエーションも豊富です
貴腐ワインで、発酵中または後のワインに甘口のブドウを添加する量によって、3プットニュスから6プットニュスまであり、このプトニュスと言うバケツ(みたいなもの)を差す単語は聞いた事がある方も多いのではないでしょうか
当然6プットの方が高額です。
市場で見るのは大抵これかな。
3と4のソモロドニは「自然のまま」という意味で、貴腐ブドウと普通のブドウを混ぜて作る大衆ワインです。
貴腐が入る割合によって甘くなったり辛口になったりします。
昔は辛口、と習いましたが違うんですね(アスーやエッセンシア程甘くない、と言うべきなんでしょう)
今日のワインは1でも2でも3.4でもなく、
7のケーシェイ・シュテーレシュです
kesoi szuretelesuはマジャール語のlate harvestです。
そのまま、遅摘み、という意味です。
500mlの小サイズ、アルコール度数は11度
ベンディミア・タルディーアって書いてあればまだ分かるのに。
セパージュは、フルミント80%、ハーシュレヴェル10% 、ゼータ 5%、シャールガ ムシュコターイ 5%
この遅摘みは、貴腐が50%以上付くまで待ったブドウを手摘みで収穫、ハンガリー産のオーク樽で発酵・熟成させています。
その後15ヶ月瓶で熟成してから出荷しています。
糖度に関する資料がない… 肝心な事が不明じゃダメよね
しかし、バランスの取れた、十分な甘さのトカイです
セミヨンの貴腐もいいけど、フルミントの貴腐もいいです
このはちみつ色を見よ↓
どうも色調が青いのは腕が悪いのか、端末のせいなのか、両方か
ところで、トカイ地方は第一次大戦後に一部がチェコスロバキアに帰属する事になり、ハンガリーとしての生産地域が減少してしまっています
ですが、その新たにチェコに帰属した地域でもトカイの名称でワインを生産する事が認められており(伝統に則ったものだから)、ハンガリー政府には面白くない事態になってます。
トカイ地方26のコミューンが認定されていて、オレムスはその中心部のトルチヴァ村にあります。
(トカイ村から北に20キロちょっと)
ここ ↓
ハンガリーの東は一部をウクライナに接してます
長くなってしまいましたが、
トカイのレイトハーヴェスト、やっぱり美味しいです
紅茶キャンディだ
この甘口ならギリ3000円台で買えます
美食には欠かせない甘口ワイン、是非お試しいただきたい