2024年05月12日

絶海の孤島ワイン


不気味な空模様ですが、今夜の名古屋はそこまで荒れないだろうという予報です

昨日から太陽フレアの影響で普段見られない地域でもオーロラが見られたようで、シャンパーニュの生産者もいくつかSNSにアップしてます
はっきりと赤紫色に輝いてます ↓

IMG_3417.JPG
Mrie-Helene Waris-LarmandierさんSNSより拝借

すごーい



今日は普段あまり飲まないであろうワイン(の仲間)を紹介します
とってもお手軽な入門編の1本です。

N3775_G08.jpg

エンリケシュ&エンリケッシュ マデイラ フルリッチNV

マデイラ(またはマデラ)はご存知でしょうか?
シェリーやポートと同じ、酒精強化(フォーティファイド)ワインと呼ばれるワインの仲間です

フランス南西部のマディランではありませんので。

フォーティファイドワインでは、
シェリー
ポート

が圧倒的に有名で、次に
マルサラ
マデイラ
マラガ
ヴァン・ド・ナチュレル
(バニュルス等)
があります

マデイラを愛飲してる方は日本ではとても少なく、ほとんど安価な物が製菓用に使われているのが現状でしょうか。
高級マデイラの良さを知ってる方は非常に稀。


マデイラはポルトガルのお酒ですが、作っているのは大西洋の沖、モロッコの西600キロの島=マデイラ諸島なんです

ここ ↓

マデイラ.png
赤い〇がマデイラ諸島
黄色の矢印はリゾートで有名なカナリア諸島でここでもワインは作られています


マデイラ諸島はここ10年くらいで非常に知られることになったんですが、何故か分かりますか?
この島出身の超有名人がいるんです。

それは、
クリスティアーノ・ロナウドです

ロナウド知らない方はまずいないでしょうけど(サッカー大音痴のてんちょでも知ってます)、彼はマデイラ諸島のフンシャル島の出身なのです
島には彼の銅像まで建ってます。
島のサッカーリーグもあって、クラブチームも二つあるんですって。
流石ポルトガル



では、ワインの概要を簡単に説明します〜

まず、マデイラワインの誕生と歴史について。

マデイラ諸島には大航海時代が始まるころ、15世紀の初めに開拓民がヨーロッパから移住してワイン作りを始めていたようです

マデイラワインは大航海時代なくして誕生しえなかった、ある意味皮肉な産物でもあります。
ポルトガルやスペインを出港した船は、アメリカ大陸を目指して航海する途上にあるマデイラ諸島でワインや食料の最終補給を行っていました。
ここからは大海原しかありませんので、重要な寄港地だったはずです

船に積み込まれたワインは赤道付近を通過する際の独特の風味を持つようになり、それが島のブドウの特徴を増幅させるようなプラスの効果をもたらしました。
それが人気になると、その風味を出すためにわざわざワインを船に乗せて赤道を航海して戻ってこさせたこともあったくらいだそうです

その後、18世紀になってポルトガル・スペインに代わってオランダ・イギリスが台頭するようになり、船の建造や航海技術が向上するとマデイラ諸島へ寄る船が激減してしまいます。
ワインの販路を失った生産者は、ワインを蒸留してブランデーにして保管し、一部をワインにも加えて保存性を高めようとします。

これが功を奏し、
加熱とブランデー添加の合わせ技で新しいお酒が誕生したのです

ワインに熱、って基本的には絶対NG行為なのですが、例外的に上手く行くこともあるんですね
皆様はご自宅のワインは熱や日光にさらさないでください

この伝統は現在も受け継がれ、マデイラワインは島の重要な産業になっています



次に栽培や醸造について。
マデイラワインの製法は非常に独特です

マデイラ諸島の中心であるフンシャル島は断崖に囲まれた山なりの土地で、海からの強風にさらされる過酷な環境です。
内陸も急斜面が多く、ほとんどの畑が段々畑になっています ↓

マデイラワインQG-Vinha-2.jpg
生産者HPより、以下同様

作業大変だろうなぁ

ブドウはポルトガルの土着品種ばかりなので日本人には馴染みがなく、聞いたことがない品種ばかりだと思います

マデイラワインのブドウは、
白ブドウ:セルシアル、ボアル、マルヴァジア、テランテス、ヴェルデーリョ
黒ブドウ:ティンタ・ネグラ、バスタルド
となっています。

し、知らない
…マルヴァジアとヴェルデホはかろうじて分かるかなぁ

因みにこれがテランテスです ↓

マデイラワインTerrantez.jpg
いいブドウです


製法は、まず普通にスティルワインを作る過程でブランデーを添加します。
ここまではシェリーやポートと同じです、添加のタイミングによって甘口〜辛口と調整します。

その後、落ち着かせたワインを加熱します

加熱方法は二通りあります。

1.カンテイロという小屋に樽を入れ、天然の日照を屋根のガラス窓越しに当て太陽熱で加熱する方法。
高級品に使われる手法で、10年〜15年熟成の物が多い。
元々気温が高いマデイラ諸島だからできる方法ですが、今なら日本でも十分可能だろうなー

2.エストゥーファと呼ばれるタンクの中にワインを入れ、タンクの外または内側に通した管にお湯を循環させて加熱する方法。
50度のお湯で3か月程度かかりますが、カンテイロよりも早く出来上がり、場所を取らないのも利点です。
安価なマデイラはこのやり方で作られています。

どのワインもマデイラを名のる場合には最低3年の熟成期間を経ないと出荷できません。
長い熟成品には、レゼルヴァの表記が認められています


さて、ようやく今日のワインですが、
生産者のエンリケシュ&エンリケッシュは、1850年創業。
ポルトガル初代大統領アルフォンソ1世の孫が始めた蔵です

1425年にエンリケ航海王子の命で出帆した探検家のホアン・ゴンザレスが初めて植樹したブドウ畑を所有しています
創業から間もなくして、うどん粉病やフィロキセラの害を被り、困難な時代がありましたが、買いブドウなしの方針を現在も堅持している数少ない蔵であり、島を代表する地主として有名です

本社は近代的な建物で島の南側で、海がよく見える場所にあります ↓

マデイラワインEdificio-HH.jpg
樽が見えますね、リゾートっぽい

カンテイロやセラーは畑の近くです ↓

マデイラワインHH-Cellar-Quinta-Grande.jpg


今日のマデイラは、エストゥーファを使った入門編の甘口です
ティンタ・ネグラ・モーレ100%
加熱後にソレラシステムで2年熟成させてバランスよくしています。

価格は2000円台とお手頃です

琥珀色の甘口で飲みやすいですが、アルコールは19%。
飲用以外には、製菓やお料理のマデラソースに使われたりすることもあります

今日のマデイラは甘口なのであまり感じませんが、加熱したドライな乾いた後味があるかもしれません。
マデイラらしさ、でしょうか。
是非、現地で飲んでみたい。
大西洋の島に行くことあったらいいなー

マデイラ、飲むこと少ないでしょうが、ミツクラの店頭にありますので、お試しください〜

















posted by cave MITSUKURA at 15:19| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする