2018年08月16日

アンドレ・クルエ覚書


昨日から名古屋は雨が降るせいか、多少は暑さがマシな気がしますね
でもまた来週からは暑さが復活するそうですが。


ネットニュースで、

ソムリエ協会の認定バッジをオークションサイトに出品してる人がいる、との記事を見て…

あれって裏に番号あるから誰か特定可能でしょ??
(買う側からしたら無意味なんでしょうけど)
売るって

ブドウ(の形)のバッジなら普通に買えますし、ソムリエは職業の名称なので試験云々とは本来は直接関係ないのですけどね

何でも売れるんだなぁ〜


では、今日はシャンパーニュの紹介で、個人的な備忘録としても書いておきます
長いですが、お付き合いお願いいたします。

ワインはこちら ↓
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左から

アンドレ・クルエ

グランレゼルヴNV
シルバーブリュットナトゥールNV
ロゼ NO.3 NV
ミレジム2008
ザ V6 エクスペリエンス
アン・ジュール・ド1911
ドリームヴィンテージ2009
ドリームヴィンテージ2008 V2
ドリームヴィンテージ2006 V2
ドリームヴィンテージ2006
ル・クロ2008 マグナム


11種類(12本分)、手に入った全てのアンドレ・クルエが勢ぞろいです
(本当はドリームヴィンテージ、他のヴィンテージも少しあったのですが発注が遅くて買いそびれましたぐやじい)

シャンパーニュファンにはアンドレ・クルエ贔屓の方も多いですね

ラベルが素敵

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このラベル、昔々にボランジェから「RDに似てる、真似するな」と訴えられたことがあります

しかし、RDよりも先にこのラベルが販売されていたことが証明され、ボランジェは返り討ちに逢っちゃいました
その際のすったもんだがあって、アンドレ・クルエのラベルにはグランクリュ表記がありません
ボランジェの懐の小ささというか、ジャン・フランソワの意固地さというか…

でも、ちゃんとグランクリュですよ、書くまでもないけど。


アンドレ・クルエはシャンパーニュ地方のモンターニュ・ド・ランス地区にある特級ブジーにあります

ブジーは小さい村ですが、

ポール・バラ
ジョルジュ・ヴェッセル
ブリス

など人気の生産者もたくさんありますが(順不同)、隣のアンボネイと同様にそこまで大規模なメーカーはいないですね。

村の中心には教会があって、十字路の角にエドモン・バルノーのショップがあります。
その2,3軒隣がアンドレ・クルエです

てんちょ、10年以上前ですが、ちゃんとアポ取って行ったのに、御当主のジャン・フランソワが日にちを間違えていて、いないという事態に…
エドモン・バルノーのショップから電話してもらって(親切にありがたい)、急いでやってきたジャン・フランソワ。
その間、近くの親戚のメゾン、ポール・クルエで待たせてもらったのでした

「土曜じゃなかったっけ??」って、違うよー
土日にアポは取りません


当主のジャン・フランソワ・クルエ氏はシャンパーニュメーカーとしては3代目ですが、先祖代々ブドウ畑を所有し、赤ワインのブジー・ルージュを作っていました

中世からアイが優れたピノノワールの産地であったことはもちろん有名ですが、ブジーでも同様に良質の赤ワンが作られていて、発泡ワインができる前はそれらが「シャンパーニュのワイン」としてブルゴーニュのライバルだったのです

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今で多分40代前半、20代の頃から蔵を継いでいます。
当時、彼の作ったノンドサージュのシルバーブリュットがスウェーデン王室御用達になり、王女の結婚式に招待されるなど一躍注目されました

有名になったことでシャンパーニュは大変よく売れるそうですが、

これ以上量を増やすつもりはない

ときっぱり言い切ってました

ギャラリエ・ラファイエット(フランスの有名デパート)で買い占めできるくらいの収入になるだろうけど、お金を稼ぐ事が目的じゃない。
自分の目の届く範囲はこれで限界だ、と。

そして、先祖がナポレオンの側近だったそうで、テイスティングしながら当時のを見せてくれました
1976年飲ませてくれました、しかも残ったボトルをくれた

彼は今でも赤ワインを作っています、先祖の伝統を絶やさないために。
これが非常に美味しいのですが、日本には輸入がない

そして、

ブジー・ルージュは優れた赤ワインであったし、これからもそうだろう。
何故ならブジーでは素晴らしいピノノワールが作られるから。


と、先祖への尊敬と伝統を継承する自負に溢れてました

家の裏にもブドウ畑があって、その奥に醸造所があるんですが、途中の車庫にはおばあちゃん(故人)の古いシトロエンが大事に取ってありました。
日本車も持ってたよ。

生産形態は元々SR(同族レコルタン)でしたが、RMになり、今ではNMになっています
NMになっているのには重要な理由があります。

ジャン・フランソワはピノノワールしか栽培していないのですが、事情があってシャルドネを少しだけ買っています。
この買いブドウをする為に、ネゴシアンとなる必要があったのですが、事情は後述。

話が上手で冗談ばっかり言ってるかと思いきや、一転して真剣な話になったり、面白い人だった

ブドウ畑で樹に吊るしたホルモン剤(害虫除けでオス用、メス用とある)を示して、
「メス用をつけてナイトクラブに行けばモテモテだ」
「間違えて逆を付けると恐ろしいことになる」とか、
電話が鳴れば、
「彼女が放っておいてくれなくて困るんだよねぇ」とか。
(真面目な仕事の話っぽかったですよ)

しかし、電子ロックの付いたカーヴには許可なく入った者はその場でクビにする、そうで
収穫人は毎年同じ人を雇いたい、学生よりは南から移動してくるジプシー(差別的な意味ではない)達が好ましいと話してました。

ステンレスタンクの並んだ醸造所は非常に清潔です、大きくはないけれど床までピカピカ

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ホースも透明な物を使用して内側の洗浄が完全にできているか確認するのを怠らないと言っていました
2次発酵中のボトルを持って澱を見せてくれましたよ。

ここの発酵は少し変わってる。

一旦ステンレスタンクで一次発酵を始めたワインを2年か3年物のバリックに移し、その後またステンレスタンクに戻して発酵を完了させる、という何とも面倒なことをやっていました

バリックはソーテルヌのドワジーデーヌの物だった、知り合いなんだって(意外)

シャンパーニュメーカーはみんな、酸化の過程を上手く利用してリザーヴワイン(とできるシャンパーニュ)に耐性を持たせようとしますね。
樽発酵もその一つ、ボランジェのマグナム保管とか。
経験則的に実証されているんでしょうか、根拠はまだ明らかでない事も多いですが。


また、ジャン・フランソワははっきり言ってました

シャルドネは世界中にあって面白くない、誰でも容易に作れてしまうから。
その点、ピノノワールが成功しているのはブルゴーニュとシャンパーニュだけ、ピノノワールを作る事に魅力を感じる。
ピノノワールしか作らない。


この信念が素晴らしいシャンパーニュと赤ワインに現れているんだなぁと思います
彼が持っている畑にはピノノワールしか植えられていません。
畑は特級ブジーと隣の同じく特級アンボネイにあります。

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では、個別にシャンパーニュを見ていきましょう
(訳あって味には言及しません、悪しからず)

1.グランレゼルヴNV

これが蔵の基本のシャンパーニュです。
ピノノワール100%、直近の3年くらいのヴィンテージのブレンドです、ドサージュは9g/L

2.シルバーブリュットナトゥールNV

グランレゼルヴと基本的には同じベースワインを使用。
ピノノワール100%、ドサージュなし
以前は年産2000本程度しかありませんでしたが、今はもう少し増やしてる

3.ロゼ NO.3 NV

こちらもマルチヴィンテージ、ピンクの色付けには自家のブジー・ルージュを使用。
ピノノワール100%、ドサージュ8g/L
赤ワインが単一年の為にヴィンテージの特徴が出やすいと言われています。

NO.3というのは「シャネルの香水みたいにしてみかった」そうです(笑)
なので、3番じゃないのもあります

4.ミレジム2008

単一年でヴィンテージによりブレンドは異なりますが、08年はピノノワール80%、シャルドネ20%
デゴルジュマンは7.5g/L

昔はピノノワール100%だったんですが、シャルドネを混ぜるようになったのです

それは、メニル・シュル・オジェに住む友人(誰だろう)から、ロゼを作る為のピノノワールを売って欲しいと頼まれ、代わりに彼のシャルドネをもらったから。
ブドウを交換する事で可能になったブレンドです

その為に生産者登録をNMにしたのでした


これはジョルジュヴェッセルも同じですね、積極的な生産増の為の買いブドウではなく、バリエーションその他の事情による買いブドウなんです。

資料に記載がないですが、確かこれだけMLFなしだったはずです。
それ故、これだけいつも妙に固い… 
毛色の違う人ですよ。

5.ザ V6 エクスペリエンス


これは新しいラインナップで限定品です。

ピノノワール100%、2009ヴィンテージ50%、2010ヴィンテージ50%
6g/Lのリキュール・デ・エクスペディション、2017年10月にデゴルジュマン。

V6は瓶熟6年を意味していますすごい。
高みに連れて行ってくれる、ということでロケットがついています

6.アン・ジュール・ド1911

これが蔵の定番の最高シャンパーニュです。
ピノノワール100%、ヴィンテージ50%と複数年ブレンド50%
ドサージュ5g

1911年は伝説的なグレートヴィンテージで敬意を表し、その年を名に作られています
(オーヴでは大規模な暴動が起こった年なんですけど)
毎回、最大でも1911本しかリリースされません。

1911年当時の収穫の写真がついた説明書きが一緒についていて、これには手書きの部分があります

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1167本の中の59番目、17年9月3日にデゴルジュマンしています。
フランス人の数字は読みづらい…

これを初めて飲んだ時には非常に感動しました
こういうシャンパーニュもあるんだ、と思いましたね。

残念と言えば、パッケージがスパゲティみたいになっちゃったこと

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前の藁もセラーでバラバラして面倒なんですけど、このストローでは風情がないなぁ

7〜10.ドリームヴィンテージ

これこれ
これが出た時はびっくり仰天しましたよ。

だって、あれだけピノノワールにこだわっていたのに、このシャンパーニュはシャルドネなんですよ

それで初めて知ったのです、友達とブドウを交換したって事を。
まだ一度も飲んだことがないので、期待しています

何も書いていないのはシャルドネ100%
V2となっているのはヴァージョン2の事で、シャルドネ90%ピノノワール10%とブレンドが異なります。

が、
見た目が全く同じで区別できるものが一切ない

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張り紙が剥がれちゃったら、あとは飲んでみるしかないのかー

因みにこの綺麗なラベルの色はキャデラックのボディカラーだそうです

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アメリカンドリームの古き良き時代を表現してるんだそうで。

ピンクのもあったんですが、それが買えなかった
残念無念

11.ル・クロ2008 マグナム

さて、ようやく最後。
2006年がファーストリリースで08年が二番目となります。
瓶内2次発酵後66ヶ月熟成と5年半もの熟成で、5g/Lのリキュール・デ・エクスペディションと少ないドサージュ

アンドレ・クルエのメゾンに隣接し、クルエ家が単独所有する畑「クロ・ド・ブージー」より収穫された葡萄のみを使い造られた特別なキュヴェです。

この区画のブドウは普通は1911になるのですが、特別にマグナムボトルとして生産されました。
もちろん限定。

さー、これでアンドレ・クルエは全てです。
長くなってしまった…

一度に飲めば違いが明確になるでしょう
















posted by cave MITSUKURA at 13:32| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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