風が強い中、名古屋はマラソン(ウィメンズじゃないの、今年?)の日であちこち通行止めです

昨日はリースリングの誕生日だったそうです

586歳

586年前の1435年3月13日、
リュセルスハイムのブドウ園に植えられた品種が「リースリング」だと、初めて記録された事を記念しています
リュセルスハイムのブドウ園に植えられた品種が「リースリング」だと、初めて記録された事を記念しています


wine of germanyより
リュッセルスハイムはヘッセン州でマインツの東にある都市です。
ライン川の東岸になりますので現在は指定栽培地域(BA)ではありませんが、ワインの歴史では長らく中心地であった町です。
もちろんローマ時代からブドウ栽培は行われていましたので、もっと前からリースリング(らしきぶどう)はあったんでしょうが、
公式の記録に名前が登場するのが、この15世紀前半なのです

日本だと室町時代、永享の乱の数年前ですかー(実は室町時代をよく知らない

フランスでは100年戦争の終盤、ジャンヌ・ダルクが火刑になって4年後です。
プロ―ジット

前回、ドイツ・リースリングの記事は書きましたので今日は別のワインを紹介します

長年、店頭で人気の定番ワインです。
ラ・アタラヤ デル・カミーノ2017

自由の女神みたいな素敵なラベルです

覚えやすいですしね

このワインはスペインの赤ワインで、産地はアルマンサです

店頭ではスペインワインに詳しい方にはついぞお目にかかりませんが、てんちょはスペイン大好きです

食文化もワインも、イタリアとはまた違う魅力があります。

今日のワインの内容の前にスペインワインの産地を簡単に復習しましょうか

スペインワインの法規制は何度も改正されており、現在では7ランクに分類されています。
実質認定がないカテゴリーもありますので、正直混乱してるだけな印象はぬぐえませんが、産地の知識として重要なのがフランス法のAOCに当たるDOです。
DO(英語読みでディー・オーでいいです)は、現在68の産地が認定されています。
(この上級認定でDOCがあり、リオハとプリオラートはそちらになりますが併せて70の産地と言ってもいいかもしれません)
スペインDOで真っ先に名前が挙がる産地と言えば、
リオハ
リベラ・デル・デュエロ
かなぁ、これくらいは文句ないでしょう

あとは、
プリオラート
ラマンチャ
ペネデス
ナバーラ
ルエダ
トロ
リアス・バイシャス
フミージャ
…どうでしょう?
さらに重要なのが、
カヴァ
ヘレス(シェリー)
ヘレス(シェリー)は酒精強化ワインですが、食通としては決して見過ごせないお酒です

ポルトガルのポートと並んで「かっこいい大人」には不可欠な知識でっせ

こういうお酒を楽しんでる人達は、ワインの産地を本でかじった程度の素人が偉そうにしてるのとはレベルが違います

今日は細かい産地には立ち入りません(書いてると3日はかかるだろう)
ワイン規定にも言及しませんが、規定は過去に簡単に書いてるブログがあるので貼っておきます ↓
https://cave-mitsukura.seesaa.net/archives/20180505-1.html
スペインワインの細かな産地がピンと来ない方も多いと思いますので、
スペインという国にはどんな州があるのか説明します

大まかな州のイメージが理解できれば、個々の産地が分からなくても位置関係は多少は理解できるのではないでしょうか?
この前提がないまま、やみくもにDOの暗記に走ってる人が多くて残念な気がするてんちょ。
どこの国も同じですが、きちんと理解するのは歴史を知り、地図をよく見る事は必須です。

↑ 何度もお世話になっている、スペイン大使館商務部の資料です。
日本語で詳しい解説もありますので勉強したい方は是非ご覧ください
http://www.jp.foodswinesfromspain.com/wine/sw-map.php
地方を覚えて、州を整理するのもいいですね。
州と言う事で一旦、ワイン法から離れてみましょか

スペインはイベリア半島の大半を占める国で、首都はマドリード。
バルセロナを州都にするカタルーニャの独立運動が記憶に新しい所ですね。
歴史的には、
イスラム教徒の侵攻があり、
レコンキスタがあり、
大航海時代が来て南米などへ進出し、
カトリックによる厳しい宗教弾圧があり、
ナポレオンによって解放され、
ほぼ現在のスペインになっても王制を維持、
共和政が一時政権を取るも、
数年で国民党に回帰、フランコの独裁時代
フランコの死後、民主制へ移行
と、簡単すぎますが、こんな流れ。
フランコ時代の話は誰もしようとしませんね…
今のスペインとは大違いの時代があったとは信じられないくらい

スペインの行政区は17の州に分けられています ↓

WIKIより
地中海のバレアレス諸島(マヨルカ島など)や大西洋のカナリア諸島もスペインです。
アフリカにも領土があるのね。
州の中には県がありますけど、そこまでは知らなくても大丈夫ではないでしょうか

まずは有名どころ。
首都のあるマドリードはマドリード州に属していて、スペインのど真ん中です

マドリードから南に1時間くらい、観光でも有名なトレドはカスティーリャ・ラマンチャ州です。
バルセロナはカタルーニャ州で地中海に面していて北はフランスです。
アルハンブラ宮殿などイスラムの遺産でも有名な観光都市のセビージャ(セビリア)はアンダルシア州でイベリア半島の南端です。

これくらいは知ってる方も多そう

3大巡礼地の一つ、サンチアゴ・デ・コンポステーラがあるのはガリシア州です。
ここにはアルバリーニョで知られるリアス・バイシャスがありますね。
オレンジで有名なバレンシアはバレンシア州にあります。
独特の文化や文字を持つバスク州は美食の町でも有名ですが、サンセバスチャンは州都ではないんです。
ここまでなら聞いた事ある方もいますよね

上掲の地図で位置を確認してして。
さて、残りの州ですが、こっからはちと大変かも

カタルーニャ州の東にあるのがアラゴン州です。
かつてのアラゴン王国の領土で州都はサラゴサ、ワイン産地ではカリニェナ、カラタユド(言いにくい)が大きな産地です

カンポ・デ・ボルハもアラゴン州です。
アラゴンの東にはナバーラ州があり、ここはワインもDOナバーラで伝統的なロゼの産地として国内では知られていました。
さらにナバーラの東内陸に接する小さな州がリオハ州です。
リオハは先に出ましたが、ナバーラ州を通って流れるエブロ川沿いに銘醸畑が広がる一大高級ワイン産地で赤が特に有名です

北側を大西洋に面するカンタブリア州とアストゥリアス州はスキップしまして(ごめんね、リャマサーレスの「狼たちの月」読んでね)、
これらの南、リオハの東にあるのがスペイン最大の州であるカスティーリャ・イ・レオン州です

アラゴン同様、かつてのカスティーリャ王国の名前を基にしていますが、個々にはリベラ・デル・デュエロやトロがあります

他にも多くのDOがありますが、DOでないワインの生産も盛んです。
ここはてんちょも完璧とは言えんなぁ…
ウクレス?
メントリダ??
と、超長くなってしまったので、一回休み。
南半分は次回に回します



有名な州都北部の州はこれで全部。
ようやくですが、今日のワインの話に戻りましょう

さて、今日のアタラヤはヒル・ファミリーという大企業が持つワリナリーの一つです。
スペイン語なのでGILでヒルって読みます。
ヒル・ファミリーグループはまだ新しい企業でスペインワインの可能性に着目し、輸出市場を念頭に置いて高品質で低価格のワインを生産すべくスペインに進出しました。
現在スペインに10か所程度のワイナリーを所有していて、その場所も、
フミージャ
リオハ
ルエダ
モンサン
リアス・バイシャス、など広範囲に渡ります。
今日のアタラヤがあるのは、DOアルマンサ

先程登場したカスティーリャ・ラ・マンチャ州の東にある町です

ですが、すぐ東はバレンシア州なのでほとんどバレンシアだわ💦
地中海から100キロほどの内陸にあります。
丘の上に残る古城が有名です。
ここ ↓

因みにDOアルランサという産地もあるので間違えませんように。
アルランサはカスティーリャ・イ・レオン州、リベラ・デル・デュエロの北にありますので、アルマンサからは遠い全然別の産地です。
アタラヤの畑の標高は700〜1000メートルと意外と高く、乾燥した風の吹く土地で如何にもスペイン内陸の風景です ↓

輸入元HPより、以下同様
樹齢が古そう。
メセタの端っこです。
この畑は、冬は大変寒いらしいのですが、やっぱり夏の日差しは容赦ないそうで、だから標高の高い所に畑を作って昼夜の寒暖差がブドウの健全な生育を助けるようにしているとの事です

高貴なワインになるにはブドウの高貴さや複雑さが大事。
アタラヤとは「監視の塔」という意味らしい、小作人を見張るブルゴーニュの「クロ・ド・ゲット」と同じだろうか

このワインはスペインでもアルマンサにしかない、固有の特徴があります

それは、ガルナッチャ・ティントレラというブドウを使っている事です。
ガルナッチャ・ティントレラは別名アリカンテ・ブーシェと言い、ガルナッチャの交配で出来た品種です。
このブドウは一般的な黒ブドウとは違って、果実まで赤い色が付いているのが特徴です

よくある黒ブドウは中が黄緑ですよね。
こんなです ↓

従って、果皮と共に醸すと非常に濃い、ものすごーく濃縮した赤ワインができるのです

タンニンもポリフェノールもいーっぱい

アルコール度数も高く、フルフルフルボディになりますので、あまりに強くなり過ぎないようにモナストレルを15%ブレンドしています。
樽熟期間はワインを見ながら調整しています。
平均収量は27hl/ha、スペインではかなり少ないです

香りがスペインらしくドライでスパイシーですが、味は果実味の豊かなまろやかさがあり、渋くもあります。
そしてやはりフルボディの濃厚ワインです

今時こういうワイン少ないので、濃いのが好きなお客様には大変好評です

価格も嬉しい3000円以下



アルマンサ、って覚えながら飲んでみてください〜
