雨が降って来ました、今日の名古屋はちょっと肌寒いです

イベント欄にも案内しました通り、店頭ではワインの木箱の販売をしております

このところ木箱での輸送は減少していて(段ボールの方がエコでコストダウンできるので)、それなりのワインでないと木箱に入って来ません

しかもケースで買う必要があるし。
更に、12本の木箱も減っていて、縦(横?)半分の6本箱が主流です こういうの ↓
ラフィットやルフレーヴでもそうです(ただ、ルフレーヴの木箱はスライドの蓋つきですので手間がかかっています)

無くなり次第終了です。
店頭に足を運んでいただけたら嬉しいです。
今日は4月19日火曜に開催する、
「ルイジャド 2020バレルサンプル他 テイスティングセミナー」の予習をしたいと思います

当日の試飲ワインです ↓
参加できない方にも、今後の購入の参考になれば。
オンラインセミナーの講師、山本昭彦さんのお話を元に紹介します。ちと長めです。
19日の試飲ワインは7種類(各2本)ですが、バレルサンプルがハーフの為に今回は定員を10名といたしました
2020年の日本での販売開始は12月です(→大抵注文した事を毎年忘れているてんちょ、先すぎる)
てんちょ、業界向けの試飲会には残念ながら参加できませんでしたが、それより前に開催されたオンラインセミナーは受講できました。
2月のブログはこちら ↓
https://cave-mitsukura.seesaa.net/archives/20220209-1.html
あと、当日のサンプルの残りをいくつかお持ちいただけて、ひっそり勉強させていただきました


ありがたや〜
もう、ブルゴーニュのヴィンテージが云々よりも、まずは値上がり(しかも激しい)の話が筆頭に来るこの頃です

この価格の高騰は、2021年の不作(春の霜害のせい)を受けて一層強まると言われています。
不作だと物がない

ただでさえ収穫が減少気味なのに…
原油高、コンテナ不足、ウクライナ紛争の影響での輸送ルートの回避、全てが輸送費の高騰を招いています。
それがワインにも反映されるという訳です

そして、一度上がった価格はまず下がらない、と言うのが大方の予想。
そーだろーなー

これから、どれだけ豊作が続いても下がることは無い。
世界恐慌の様な大事件があっても、これまで下がらなかったようにやっぱり値下がりはしないでしょう…
そういう暗い話は一旦置いといて、畑とブドウとワインの話をしましょう。
やはりキーワードは気候変動です、2020年の特徴とそれに伴う変化や工夫について3つ書いておきます。
1.収穫時期
2020年は気候変動が言われて久しい中で、かなり早い収穫の年となりました

著名な作り手でも8月の15日前後からボーヌの白が収穫を始めており、25日辺りではヴォーヌロマネでも収穫開始となっています

これは2003年や1855(だったかな?)に並ぶ速さで、どちらも猛暑で知られる年でした。
しかし、2020年はもうその何年も前から「暑さ」がお決まりになっていて、殊更それがニュースになったりはしませんでしたので、業界人以外ではそれを知る人が少ないのは当然かもしれません。
2020年は春も早く訪れました

4月の気温上昇が早く、それに伴い芽吹きも早かったので結果的にはそれが早い収穫に繋がったと言えます。
霜害も起こらず、乾燥した夏がやってきて、そのまま収穫へと向かったような年だったのです

この夏の少雨(と強い日照)のせいで、一部の畑では白ブドウは生育が止まり、黒ブドウは焼けたりしたようですが、概ね健全なブドウばかりで選果の必要がほとんどなかった生産者ばかりになったようです(必要な選果が畑のピッキング時だけで済んだ)
全体では、白は特に成功したヴィンテージとなったようです

完熟によってリンゴ酸がやや少ないブドウでも酒石酸がそれを補い、フレッシュさが保たれたようです。
赤では、ブドウが小粒になりましたが(水分供給が少なかったので)、繊細なタンニンで平均のアルコール度数は13.5度と2019年よりも低く抑えられています。
これには、収穫時期の比較で言及された2003年とは明確な違いがあり、2020年では暑い日もあればそこまでもない日があった事が大きな理由になるようです


都市部で死者が出るほどの猛暑になった2003年は熱波が連日連夜に渡ってやってきて、ブドウも人も一息ついたり、休んだりする暇がありませんでした

毎日、毎晩、ぜーぜー言ってた訳です。
その点、2020年は夜の気温が下がる時もあり、蒸散せず(日中に作った養分を消費せずに済んだ)休めた事が、ブドウの健全さを保ち、なおかつほどほどのタンニンと酸味の温存に繋がりました

日較差は非常に重要です

実際、ブドウのハングタイム(開花から収穫まで)は2003年では85日と大変短いのですが、2020年では一般的な100日となっています。
似た年とも言われながらやはり同じではありません。
2.全房発酵について
最近よく耳にする全房発酵。
上記のような気候変動を受けて、各生産者では如何にワインのエレガンスを保つか試行錯誤を繰り返しています。
これまでの様にワインを作ると、赤は真っ黒で渋々、白でもアルコール度数15度くらいの強ーいフルボディになってしまい、それは理想のブルゴーニュワインとは言えません。
ルイジャドでは2020年に初めて一部のキュヴェで全房発酵を導入しました

サントネイで35%
ボーヌの1級の一部で50%
ですが、試験的に導入してみただけで今度はどうするかまだ分からない、そうです

一部の著名ドメーヌが行っているので、みんな注目してはいますが、ルイジャドではメリットばかりじゃないので全面的に賛成ではない、とう姿勢です。
各生産者の考えは違っても、どこもいいワインを作るために一生懸命なのは同じ。
全房発酵についても、もう少し時間をかけないと答えは出ないでしょう

確かに全房発酵には、
総HPが下がる(フレッシュな印象を保てる)
アルコール度数も抑制できる、
というよく言われるメリットがありますが、
その反面、長いマセラシオンが必要になり、揮発酸が発生しやすい等リスクもあります

2020年だけを持って、全房発酵の是非を論じる事はルイジャドでは出来ないでしょうし、ワインのその後をよく観察する必要があります。
3.評価される区画の変化
これは末端の消費者としては、まだそこまで如実に体感している訳ではありませんが、理屈はごもっともなんです。
ブドウの植えられている斜面が、上部・中部・下部とあった時、最も良いとされる区画は上部(または中部上)になるのが定石なのはご存知でしょうか?
ロマネ・コンティやレザムルーズは国道東の平地にはありませんよね。
それは斜面の上の方が水はけがよく、効率よく排水される事で果実に凝縮した旨みが蓄えられるからで、さらにブドウ樹が水分を求めて長く根を伸ばすことによりより複雑な味わいになる為なのです

反対に斜面下部では表土が厚く、地中の水位が高いので、水分過多で薄まったブドウになりやすく、高貴なワインにはならないと言われていました

ですが、最近の気候変動でとにかく暑い、暑すぎるので夏には水不足になる事が頻発してしまい、安定的に水分を得られる斜面下部の方がブドウの出来が良くなってきている、という驚くべき変化がみられるそうです

かつて、区画の水はけを最重要視していた栽培家達は、今では保水能力が一番重要だ、と言っています

そして、最初に「暑さで焼けたブドウがある」と書きましたが、これに関しても区画の評価に変化が出ているようです。
ブドウが焼ける現象は、西向きや南向きの斜面で起こりやすい事で、そのせいで、かつて最高の日照が得られる西向き、南向きの斜面はベストの区画だとされていたのが、今では日差しが強すぎてかえって良くない、という事態になっています

20年前の区画の評価はもう現在では通用しないかもしれません

コートドールが王道ではない時代が来てもおかしくない、というお話です。
土壌云々があった後で、標高が高く涼しい区画が有利、と言われる昨今の事情、分かっていただけますか?
このように条件が変化していて、値段が高くなりすぎた事は、これまであまり注目されていなかったAOCを見直すきっかけにもなるだろうと言われています

以上3点でした。
で、2020年の出来と味ですが。
2020年は先にも書きました通り大変成功したヴィンテージです

今は白の評価が高く、2007年や2014年に似ているようです。
酸味が感じられる古典的なスタイルで、飲み頃になるまでには待つ必要がありますが、既にポテンシャルは高い。
21年が50%(うっそでしょ)も値上がりするだろうと言われていますので、19も20も買っておいた方がいいらしいです

赤はヴォーヌロマネ(ニュイ)のスタイルが全体に共通するようで、洗練された酸味とアルコールがこれまた熟成を待つべき事を物語っています。
安定した構造にエレガントな中身が感じられ、パワフルさと繊細さが共存しているようです。
香りが変化しだす頃にはそれらが調和しあって、素晴らしい余韻になるだろう予感があります

飲み頃には5年じゃまだかなぁ、忍耐求む
何を買おうかなぁ

セミナー参加の皆様はこれを踏まえて当日の試飲に臨んでいただけましたら

参加できない方でも、以上の事柄を覚えていただけたら今後のワインライフに何か役立つかもしれません

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