良く晴れていますが、寒風が強くて頭がぼさぼさになってしまう

花粉も良く飛んでるみたい

春と秋は業界向けのセミナーや試飲会が多いのですが、今月は都合が合わなくて行けない催しも多くて残念です

行ける会には出来るだけ参加したいと思っていますが。
先日は毎年恒例のルイ・ジャド2023バレルテイスティングセミナーに行ってきました


昨年9月にボトリングしたサンプル(今年は750ミリだった)の試飲と、2023年の作柄などに関する報告です

このテイスティング会は世界でもイギリス、アメリカ、日本の3か国のみでの開催で、日本でも招待のみの希少な機会です。
昨年は醸造家のフレデリック・バルニエ氏が来日していましたが、今年はアジア・パシフィックマネージャーのエリーさんが講師でした

非常に有益なセミナーでした

昨年2022のテイスティングはこちら ↓
https://cave-mitsukura.seesaa.net/article/502652955.html
エリーさん、昨年の秋にディナー会やって以来ですが、相変わらず忙しそうでした

世界経済の変動にも対応していかなくてはいけませんし、戦略がますます重要になります。
セミナーで出た話題ではありませんが、ワイン市場でのアジアの中の日本の地位はすぐにではないでしょうが、今後は低下していくと思った方が良さそうです

日本はアジアでは成熟したワイン市場だと、フランスでも一定の尊敬をもって受け止められているんですが…
若年層の比率、今後の経済成長などを考慮すると、もう日本ではかなわないでしょう…
大勢が集まる場所では政治の話は控えるべきとの暗黙の了解があると思いますが、それでも国策を疑問視する意見がちらほら出るくらい、誰もが現状には不満があると思います

さて、2023年ですが。
いつもながらジャドのデーターの蓄積と分析・統計には目を見張るものがあります

これを頭に入れておけば、2023年のブルゴーニュについて大いに語る事ができますし、いつでも使える大変有益な情報満載です

ありがたい

22年と並んで暑い年になった23年ですが、予想よりも萌芽が遅れたことが幸いして霜害にも合わず、いいスタートを切りました。
夏はやはり暑くて8月に収穫開始のつもりでいたのが、雨が降ったことに救われて水不足にもならず、9月上旬に収穫となりました。
いいタイミングで雨が降ったおかげで、ブドウの糖度と酸のバランスも良く十分な収穫量も確保できた成功したヴィンテージとなったようです

てんちょ、23年の7月にブルゴーニュにいましたが、どの生産者も22年は水不足になったけど23年はそれがなくてよかったと言ってましたね。
「去年に比べて葉が緑色してる」と。
ただ、9月の熱波の中での収穫となり、非常に限られた日数での収穫作業はタイト過ぎて全員総出の総力戦になったらしい

早く取らないと酸やフェノールが無くなっちゃいますからね

大変だわ。
恒例のバブルグラフに、2023が加わりました


ブドウの熟度だけだと2015や2019の方が上なんですが、平均(コートドール)するとこうなるらしい。
このグラフだけだと、2013ってそんなにダメだったかなぁっていつも思いますが

このグラフは非常に印象的で使いやすいので、おすすめですよ。
(勉強してないバッジ付けてるだけのソムリエより、知識をちゃんとブラッシュアップしてる一般の方の方がこういう物には敏感だと思う)
ジャドでは、珍しく、23年の赤には一部セニエをして、凝縮度を高めたそうです

びっくりです。
セニエとは、瀉血あるいは血抜きと言われる手法で、果汁と果皮や種子が一緒になってる発酵槽から果汁を一部抜くことを指します。
果汁中の果皮や種子の比率が高まる事でより濃い色になり、タンニンも増える、という訳です。
因みに抜いた果汁はロゼになる(コトーブルギュイニョン)そうです

このやり方で、赤とロゼを一度に作ってるラングドックの生産者は多いですね。
ワインの量は増えませんが(当たり前)、ある意味錬金術的手法かも

しかし、色づきのタイミングを間違るとどちらもおじゃんになってしまいますので、とても気を使う作業なんです。
ここ20年ほどの温暖化で、ピノノワールでもアルコール度数が15度になってしまったり、黒々とした外観のブルゴーニュワインが増えた事で、どの生産者も濃くしないように、繊細さを保ったエレガントな赤ワインを目指してるのですが、
ジャドでセニエを行ったという報告には衝撃でした

まじですか。
まぁ、あくまで軽く、タンニンの調整程度の事なんでしょうが。
酸とのバランスを見つつ、長熟可能なワインにするためとのことで、納得

白も早めに収穫を行い、酸味を温存しつつバランスを取った醸造にしたそうです。
MLFは一部行っただけで、リンゴ酸を残すことでフレッシュ&クリーンなワインを目指し、重くなりすぎないように気を付けたとのこと

やはり暑い中では酸が重要です、如何に糖度とのバランスを取るか、ですね。
そして、ジャドでは温暖化になる前からもデータと経験を蓄積していますので、一つとして同じヴィンテージはないものの、経験を生かした対応ができていることが素晴らしい

常に最悪を想定して動く、2手も3手も先を考えておく、と話してました。
いつも、出来うる最高のワインを作る、と。
23年のおかげで暑さに対しての経験が増した、とも。
そしてこれはブドウも同じ。
植物も暑さに適応して、ちゃんと酸を残して熟するようになってきているようです

生物の順応力ってすごい。
確か、DRCのオーベールさんのお話でも同様に、ブドウの適応力を考えると温暖化が進んでいるからといってすぐに一大事だと大騒ぎする必要は感じない、と言ってましたね。
そして試飲。
あくまでサンプルなので、これがもう少し熟成してから出荷されるのですが。
香りからも、飲んでも、すぐに「暑かったんだろうな」と分かる、厚みのあるスタイルです

赤も白も肉厚でボリュームがあります。
こってりの白(これでフレッシュ&クリーンかぁ)、甘い赤。
早くから楽しめますので、2023年は好きな人が多そうです

2022よりも前向きですね、派手かも。
もう「ニュークラシック」じゃないですけど(昨年ブログを参照ください)、これはこれでいいかな

そして、セミナーの最後には暗黒の2024年についても言及がありました

21年が霜害で収穫が激減したことは皆さん知ってると思いますが、それよりもさらにダメだった24年。
多雨と土砂崩れなどで特に北部がだめで、一番ひどいのがシャブリ、コートドニュイもよろしくない

コートドボーヌは比較的まし、シャロネーズやマコネ、ボジョレー等南にいけば大丈夫らしい。
24年が記念の年の方は早く購入してくださいね

小さな区画では生産がないワインも多いので、市場からすぐになくなりますよ。
値上がりを考えると、簡単に23年をストックしておけませんし、これからどうしようか迷うばかり。
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